その老人は欄干に凭れ、あらぬ方に目を遣っていた。大覚寺を半廻りして流れ来る有栖川(ありすがわ)に架かる大沢橋の橋の上である。母親とその二人の子どもと思しき親子が、橋の上から螢の姿を探していた。人の背丈よりも下を流れる川の両岸は、しな垂れた…
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