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 小学校の授業で、風が吹くと桶屋が儲かるという話を聞いて、面白いと思った。それからずっと経って聞いた、北京の蝶が羽ばたくとニューヨークで嵐が起きるという大袈裟な成り行きの気象学者の作り論文も面白いと思った。御池通の地下の商店街ゼスト御池の円い柱を丁度膝の高さで囲った柵に、黒い布と白い布で頭を覆った色の浅黒い二人の女が並んで腰を掛け、同じ方向、目の前の回転寿司屋にやや斜に身体を向け、入り口の暖簾を見ながら薄く口を開き、聞こえない声で何か唱えていた。地下鉄東西線烏丸御池駅から乗ってきた髪を波打たせた中年の女が、座るとすぐに顔に化粧を始めた。化粧は一駅の間で終わり、ぬり絵にクレヨンで色を塗ったような変化が女の顔に齎された。すると今度は銀行通帳を二冊取り出し、広げた両方のページをしげしげと見比べ、口の古びたバッグに仕舞った。続けて目にしただけであるが、布で頭を覆った女たちがぶつぶつ何か云ったことで、中年の女が顔に化粧を施し、二冊の銀行通帳の預金残高を見比べたのかもしれないのである。

 「私がその意味を忘れてしまったと思われるあの言葉をまずもう一度、いろいろの事物に語ってもらうことが恐らく私には必要だろう。」(マルセル・プルースト 窪田般彌訳『楽しみと日々』福武文庫1986年)

 「川内で採取キノコ、9割基準値超 長崎・放射性物質調査」(平成26年8月6日 福島民友ニュース・minyuーnet掲載)