三条通油小路の駐車場の警備員が、日に焼けた右手の指を折って数えている。親指人差し指中指薬指。男の動作はそこで止まり、小指は折らない。昨日長刀鉾稚児舞披露という報道写真を見た。祇園祭の行事のひとつである。着飾った白塗りの稚児が緋毛氈の舞台の上で、後ろを羽織袴の大人に支えられ、身を乗り出している。どのように舞ったのかは、その写真からではわからない。稚児の役が嫌で、飛び降りようとしたところを捕まえられた瞬間には見えないが。祇園祭が始まったのである。成程八坂神社の楼門に、祇園祭と染め抜いた幟旗が立っていた。長靴履きの若い板前が、高瀬川の流れに浸かり、川底のゴミを拾い集めていた。姉小路橋を挟んだそのすぐ下流で、アオサギが餌を狙っていた。川沿いの旅館で、二人の外国の男がパソコンを膝の上に、テーブルに据えた朱塗りの膳で朝食を摂っていた。山鉾の組み建ては、十日に始まるという。今日は六日。指を折れば薬指。

 「奪の古い字形は衣と隹と又とに従う。」(「鳥の民俗学白川静『文字逍遥』平凡社ライブラリー1994年)

 「「年間1ミリシーベルトこそ長期目標」 除染シンポで環境省」(平成26年7月6日 福島民友ニュース・minyuーnet掲載)