2015-06-01から1ヶ月間の記事一覧

「私は初めて日本を訪ねる前に、次のようなことを読んだ覚えがあった。足利義政は戦闘が行なわれている間もなお自分の御殿に住み続け、そこはおそらく戦闘の現場からほんの百メートルしか離れていないところだった。義政はそこで、のどかに茶の湯を楽しみ、…

その老人は欄干に凭れ、あらぬ方に目を遣っていた。大覚寺を半廻りして流れ来る有栖川(ありすがわ)に架かる大沢橋の橋の上である。母親とその二人の子どもと思しき親子が、橋の上から螢の姿を探していた。人の背丈よりも下を流れる川の両岸は、しな垂れた…