2015-03-01から1ヶ月間の記事一覧

ノートルダム女子大に差し掛かる下鴨本通の歩道で、四五才の男の子どもが仁王立ちに踏ん張り、七八メートル先にいる二十三四の男に向かって、「こっち来い」と叫んでいる。男は子どもの父親か、年の離れた兄弟か、あるいは面倒をみている身内筋の者のような…

旅鶴や身におぼえなき姉がいて 寺山修司。心当たりのない姉が目の前に現れることは、劇、物語の始まりとなる。姉という兄弟の存在がなかった人生が、ある日を境に姉のいる生活に変わってしまう。「身におぼえなき」は、心当たりがない、では言い収まらない戸…

松平容保の京都守護職就任で、従い上洛した会津藩家臣藩兵が寝起きした場所が、黒谷金戒光明寺である。藩兵の任務は、右も左も分からぬ京都の警護と尊攘派との戦闘だった。五年余の警護、禁門の変、鳥羽伏見の戦いで死んだ三百を超える者の墓が、境内墓域の…

京都府庁の正門うちの植込みの中に、京都守護職屋敷と一面にのみ彫られた石柱が立っている。会津藩第九代藩主松平容保二十七歳は、文久二年(1862)十二月、京都守護職に就いた。同年四月の薩摩藩士の関白・京都所司代襲撃未遂の寺田屋事件で徳川幕府は…