2014-08-01から1ヶ月間の記事一覧

リチャード・ブローティガンの小説『アメリカの鱒釣り』は、例えば子供の服の背中に〈アメリカの鱒釣り〉と悪戯書きされた一つの言葉である。あるいは「パイの皮を一緒に食べながら、〈アメリカの鱒釣り〉はマリア・カラスに微笑みかける。」(藤本和子訳 晶…

一週間前、玄関前に立っていた婦人が、地蔵盆の寄附に賛同して欲しい、と云った。賛同していただけないでしょうか、だったかもしれない。生まれ育った福島に地蔵盆なる風習はなく、その意味内容を知らぬまま、婦人が示した金額千円札二枚を渡した。昨日の夕…

千本今出川交差点で信号待ちをしていた時、本屋の店先にあった絵本の回転棚の黄色い三角屋根の上で、子どもが棚を回すたびこちらに向かってドラえもんが笑いながらバンザイをして見送ってくれていたのであるが、西陣の外れ、新町通上立売上ル安楽小路町に建…

四十数年NHKの朝のラジオ体操を欠かしたことがないという呉林某という者のメールの紹介が、枕元のラジオから流れて来て、目が覚めた。今日も、旅先の京都の旅館で体操をやると云う。加えて、錦市場での買い物が楽しみと、メールの付け足しをアナウンサー…

俗を続ければ、雨女という言葉があり、雨男という言葉がある。言葉にはそれぞれに意味が備わり、片や、その言葉は無意味である、という云われ方もする。あるいは言葉は音を伴う。言葉になっていない音の羅列のようなものもある。音の羅列のようなものでも、…

市営地下鉄烏丸線の鞍馬口駅から地上に出てすぐのところに、通りすがりに一瞬横目に置いただけであるが、もう一度見たい場所があった。台風11号が去った朝の空に、幾つもの綿雲の群れが浮かんでいた。知恵光院横の橘公園で黒づくめの七つ八つの女の子が、…

小学校の授業で、風が吹くと桶屋が儲かるという話を聞いて、面白いと思った。それからずっと経って聞いた、北京の蝶が羽ばたくとニューヨークで嵐が起きるという大袈裟な成り行きの気象学者の作り論文も面白いと思った。御池通の地下の商店街ゼスト御池の円…

豆腐屋のコンクリートの床が濡れていて、誰もいない。奥の上った居間のようなところにも、飯台の上に畳んだ新聞と折り込みチラシが置いてあるだけで、人の気配がない。店の正面の木の棚に油揚げが並び、左手の水槽に豆腐の四角い塊が沈んでいる。朝の作業が…

あるものを探しに、四条通の東急ハンズ、藤井大丸、高島屋に入り、エスカレーターを上ったり下ったりしたが、見つからなかった。軽い失意で外に出た。京都は、探していたものが何であるのか、どうでもよくなる暑さだった。横着して冷房の効いた場所を探した…