2014-10-01から1ヶ月間の記事一覧

上七軒の交差点から七本松通を上がれば老松町で、日野草城の、猫の恋老松町も更けにけり、が思い浮かぶ。春の灯や女は持たぬのどぼとけ。ものの種にぎればいのちひしめける。見えぬ目の方の眼鏡の玉も拭く。日野草城は、三高京大を経て、大正十三年、大阪の…

梶井基次郎は小説「桜の樹の下には」で、桜の花の美しさは、その根元に屍体が埋まっているからである、と得意に語っている。梶井は桜に対する空想を、そのように凡庸と云える美と死あるいは醜を文字通り直接に結びつけ、細工のように成し終えてしまうと、あ…

壬生大念佛狂言を観るための階段席を設けている壬生寺会館の一階は、壬生寺保育園になっている。二階は仕切りも何もない講堂で、狂言が演じられる大念佛堂に向かって吹きっ晒しのコンクリート階段が下がり、右手の下の地面に園児のための滑り台などが置かれ…

ぱらぱらと、雲の晴れ間から雨が落ちて来た。台風は夜の間に通り過ぎて行ったが、嵐山小倉山の上に鼠色の雲の溜りがあった。天気雨のことを、狐の嫁入りと呼べば、目の前の景色が入れ代っている。入れ代った気分になる、と云ったほうが親切かもしれない。目…

モーリス・メーテルリンクの『青い鳥』は、チルチルとミチルの兄妹が見た夢の物語ということになっている。兄妹がクリスマスの前の夜床に就き、同じ夢を見て、その同じ夢の中の思い出の国や森や墓地や花園や未来の王国を、青い鳥を探して訪ね歩く奇妙な話で…

朱雀第二小学校の校庭で、裸足になった生徒たちが組み体操の練習をしていた。教師がホイッスルを鳴らすと、散らばっていた生徒たちがもぞもぞとピラミッドを作った。流れている音楽は、生徒の動きとは無関係のようだった。下で屈んでいる生徒の背中の感触は…