2023-10-01から1ヶ月間の記事一覧

「祭りのじつに多い京都で、千重子は、鞍馬の火祭りが、むしろ大文字よりも、好きであった。苗子もさう遠くないので、見に行つたことはあつた。しかし、火祭りで、これまでに、もしすれちがつてゐても、おたがひに気がつかなかつたのかもしれぬ。」(『川端…

紫苑にはいつも風あり遠く見て 山口靑邨。紫苑ゆらす風青空になかりけり 阿部みどり女。「紫苑 しおん、しおに、鬼の醜草(しこぐさ)。キク科に属する、わが国原産の草花。草丈は二メートル以上になるものもあり、葉茎ともに表面がざらついている。葉は大き…

十月の大廃屋に雲離離と 下村槐太。「離離(りり)」を辞書で引くと、このような白居易の詩の例が出て来る。「離離原上草 一歳一枯栄 野火焼不尽 春風吹又生(きれぎれに生い茂る野の草は年に一度枯れては生える。野火に焼け尽くされることなく、春風の吹く…