2022-08-01から1ヶ月間の記事一覧

北野天満宮の西回廊に奉納図画の展示があり、画用紙に描かれたある一枚の画を目にして軽い驚きを覚えた。「蚕を飼う真けんに」と題する画で、小学三、四年の部の仕切りに貼り出されていたと思う。驚かされたのはその構図が、子ども時代に描いた画とほぼ同じ…

北嵯峨の広沢池の西に広がる田圃に、案山子(かかし)が十体余り並んで立っている。色とりどりの古着を身につけた案山子の立つその辺りの田圃の稲は、「祝」という酒米で、収穫の後伏見の酒蔵で大吟醸「げっしょう」になるという。落つる日に影さへうすきか…

祖母山(そぼさん)も傾山(かたむくさん)も夕立かな 山口青邨。祖母山も傾山も大分と宮崎の県境にある山で、作者は遠い場所からこの二つの山の上に黒雲が湧いているのを眺め、そう思っている。あるいは句の中の二つの「も」は、どちらの山もということだけ…

咳暑し茅舎小便又漏らす 川端茅舎。病気を抱えていた川端茅舎の自虐の句である。自分は暑さからも、小便を漏らしてしまう肉体からも逃れることが出来ない、ということを茅舎は嘆いているのでもなく、諦めているのでもなく、茅舎という者はそういう男なのだと…