2022-11-01から1ヶ月間の記事一覧

日あたりてまことに寂し返り花 日野草城。「返り花」は、帰り花とも書き、狂い花、狂い咲きともいう。風が肌寒く感じられ一枚多く着込むようになった日日の、晴れの日が続いたある日、葉を落とした木々の中に一本花をつけている木がある。それは桜かもしれな…

山茶花や宿々にして杖の痩 廣瀬惟然。八十村路通が編集した『芭蕉翁行状記』に寄せた廣瀬惟然のこの句の「杖」の主は芭蕉である。自宅を処分し「おくの細道」の旅に出て以降、弟子や他人(ひと)様の宅を宿として来た芭蕉の杖も痩せ細り、あるいは杖のように…

瑞龍山南禅寺の境内のモミジはようやく緑から黄に変わりはじめているが、山門に隣る塔頭天授庵の塀を越えて枝を伸ばすモミジだけは際立って赤く、その色に誘われ内に入ると、白砂を敷いた方丈の庭の奥まって植えられた何本かのモミジは確かに赤々と色づいて…