2023-05-01から1ヶ月間の記事一覧

水鳥や提灯遠き西の京 蕪村。五七五のこれだけの言葉からどれほどの想像をすればよいのか。水鳥が飛び立つ羽音にはっとして顔を上げると辺りに夜の帷(とばり)が降りていて、向こうに見えるあの提灯の明かりは西の京か。あるいは、不意に灯った提灯の明かり…

一と日のびし葵祭や若葉雨 高橋淡路女。今年の葵祭の行列「路頭の儀」は天候不順で一日延びた。晴れて気温の上がった五月十六日、北大路通の商店街のアーケードの切れる日陰の下で行列を待っていると、後ろの者が、京都暮らしは四年目だが行列を見るのは初め…

秋の暮辻の地蔵に油さす 蕪村。甲塚橋が架かる宝樹寺で南に折れる有栖川沿いの道を西に向かって六、七人の二十歳を過ぎたあたりの男女が歩いている。皆手ぶらで普段着のようなばらばらの恰好で誰かの命令で同じ歩幅で隊列を組んでいるわけでもなく、だらだら…