2021-01-01から1ヶ月間の記事一覧

油屋にむかしの油買ひにゆく 三橋敏雄。俳句は季語を使って詠むものであり、そうでないものは俳句ではないとする者がいるが、この俳句には季語がない。「油屋に」「買ひにゆく」ものは油であり、三橋敏雄が買いに行ったものは「むかしの油」である。たとえば…

雲林院界隈駐車嚴禁のひるや荒鹽の香の西行。塚本邦雄が昭和五十年(1975)に出した歌集『されど遊星』三百首の内の一首である。北大路通を挟んだ大徳寺の南東に、雲林院という名の小寺があるが、雲林院は幻の寺である。平安の末から源頼朝の鎌倉が始ま…

四条通は、八坂神社の朱塗りの西楼門から色合いの変わる繁華な町を貫(つらぬ)き、右京梅津の長福寺までほぼ真直ぐで、この位置から桂川に架かる松尾橋までやや南に傾きながら繋いで終わる。松尾橋の西詰には、松尾大社(まつのおたいしゃ)の大鳥居が構え…

雲ケ畑(くもがはた)という地名は、繁華な町中(まちなか)よりも遠い町外れの名に相応(ふさわ)しく、賀茂川を遡(さかのぼ)って辿り着く、川淵にオオサンショウウオの棲む洛北の山間(やまあい)の地区の名である。この地名の由来の一つに、出雲が絡ん…