2023-03-01から1ヶ月間の記事一覧

花に暮ぬ我すむ京に帰去来(かえりなん) 蕪村。桜を眺めてあっという間に日が暮れてしまった。そろそろ京の我が家に帰るとしよう。蕪村は陶淵明の詩「帰去来辞」の「帰去来」をそのまま使ってお道化てみせた。が、「帰去来辞」とはこのような詩である。「帰…

啓蟄や叱れば泣きぬ女弟子 梶山千鶴子。師弟の間で師が弟子を叱るということはあるだろう。弟子を叱らない師もいるかもしれないし、師に叱られても泣かない弟子もいるかもしれない。が、この句の師は女の弟子を叱り、叱られた弟子は泣いた。弟子は師の云う通…

道を歩いていて、どこかを通り過ぎようとして匂いに躓(つまず)くことがある。沈丁花匂ふ下京長者町 中村阪子。この作者は沈丁花の匂いに躓いた。場所は「下京長者町」であるという。が、下京に長者町は存在しない。『京都坊目誌』(1915年刊)に「中長…

「南禅寺参拝の栞」に、南禅寺の正称は「五山之上瑞龍山太平興国南禅寺」であると書いてある。南禅寺を「五山之上」としたのは足利義満で、至徳三年(1386)自ら発願した相国寺を五山の二としたためであり、五山の一となったのは足利尊氏創建の天龍寺で…