2016-11-01から1ヶ月間の記事一覧

夢に知人の男が現われ、その夢を見ている者に何か喋る。二十年以上会っていないその男は、当然その男の現在の姿ではなく、最後に会った時の姿か、それ以前の男の姿である。その男が、今度は身振りで何ごとかを説明する。その男の目は、その夢を見ている者の…

帰る家あるが淋しき草紅葉 永井東門居。永井東門居は、小説家永井龍男の俳号である。帰る家はあるのであるが、足元の草紅葉のうら淋しい様よ、と平凡に読まなければ、この「あるが」の「が」は二つに働く。帰る家があるということそのことが淋しいと、帰る家…

ルイ=フェルディナン・セリーヌの小説『なしくずしの死』の日本語の直訳は、「信用販売の死」「分割払いの死」であると、翻訳者の滝田文彦は書いている。なしくずし(済崩)は、『言海』によれば、「借リタル金高ノ内ヲ若干ヅツ次第二返済スル。」であり、『…

東福寺を己れの菩提寺として造営した摂政関白九條道家の姉立子と順徳天皇の娘懐成親王は、四歳で第八十五代仲恭(ちゅうきょう)天皇となるが、その承久三年(1221)、祖父後鳥羽上皇と父順徳天皇が北条追討に敗れ、僅(わず)か四カ月で天皇の座から下…