2024-07-01から1ヶ月間の記事一覧

「千恵子は「御旅所」の前へ行って、蝋燭をもとめ、火をともして、神の前にそなえた。祭りのあいだは、八坂神社の神も、御旅所へ迎えることになっている。御旅所は、新京極を四条に出たあたりの、南側にある。その御旅所で、七度まいりをしているらしい娘を…

うへわらは大童子にも劣りたり祇園の御会を待つばかりなり。上童(貴人に仕える少年)の態度は大童子(寺に仕える男)より劣っているまるで祇園会の行列を心待ちにしている心境だ、とこの歌だけを抜き書きしても歌の「意味するところ」は伝わらず不明のまま…

祇園会やとほ濁りせる京の空 飴山實。「とほ濁りせる京の空」はいまいるところから遠くに見える祇園祭の最中の京都の曇り空ではなく、作者は山鉾の立つ町中(まちなか)で空の曇りを見上げ「とほ濁り」と口をついて出た。雨を降らせる雲ではないが何となく気…

なつ木立はくやみ山のこしふさげ 芭蕉。夏小太刀佩く(帯びる)や深山の腰塞げ、と書けば言葉遊びに過ぎない句と分かる。向こうの山の腰の辺りに小太刀を帯びたように木が繁っていることだ、とは芭蕉二十九才の時の句。先(まづ)たのむ椎の木も有夏木立。旅…

「六月中頃、囃子方の血が騒ぎはじめ、吉符入りの案内葉書が配達されると囃子方の気分は高揚する。そして迎える七月一日の吉符入り、午後四時に函谷鉾(かんこほこ)町会所に集合した囃子方は囃子の道具を準備し、揃いの浴衣に着替える。やがて太鼓のテンテ…